主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第43回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 43
開催地: 横浜
開催日: 2022/11/30 - 2022/12/03
近年、抗体医薬品の開発技術と手法の発展は、急速に進化している。昨年4月に、4番目となる抗PD-1抗体薬dostarlimab-gxlyが、白金製剤の投与歴があるミスマッチ修復機構欠損(dMMR)の再発または進行子宮内膜がんを適応に、米国FDAによって迅速承認された。本剤は、FDAが現在までに承認してきたモノクロナール抗体薬のなかの100番目の承認になり、抗体製剤開発のマイルストーンにもなっている。一方、低分子医薬品の場合も、特に分子標的抗がん薬について、2001年にイマチニブが最初のキナーゼ阻害薬としてFDAによって承認されて以降、20年の間に実に70種類以上の低分子阻害薬が承認されてきた(Nat Rev Drug Discov. 2021;20:551-569)。
抗体医薬品は、アミノ酸から成るタンパク質および糖鎖から構成されている為、低分子医薬品とは異なる独特の薬物動態特性を示す。実際、薬物の消失半減期は、抗体医薬品の場合、2~3週間前後であり、低分子医薬品全般と比べて非常に長い。従って、抗体医薬品の多くは、数週間に1回の投与で長時間効果が持続する。抗体医薬品のクリアランスに関して、肝CYP酵素等による代謝を受けないと考えられ、内因性蛋白質と同様に細網内皮系の細胞に取り込まれて、ペプチドやアミノ酸に分解された後に排泄されると考えられる。また、抗体医薬品の標的分子への結合を介した消失経路(TMDD: target-mediated drug disposition)も考えられている。さらに、抗体医薬品に対する抗薬物抗体(ADA: anti-drug antibody)の発現は、薬物動態に影響する可能性があり、ADAを介した抗体医薬品の急速な消失とそれに依る効果の減弱に注意が必要とされる。
本シンポジウムでは、抗体医薬品の薬物動態評価にフォーカスを置き、免疫チェックポイント阻害薬に関する自経験を踏まえながら、低分子キナーゼ阻害薬のTDM研究と合わせて、がん薬物療法の個別化投薬について紹介したい。