日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-S33-3
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臨床薬理専門医の立場から
上村 尚人
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抄録

我々はこの21世紀になってパンデミックを経験した。筆者は学生の頃に受けた講義の中で、スペイン風邪の話をきいた。それを過去の話、どこか他人事のように思って聞いていたのは私だけではなかったと思う。感染症はもはや人類の脅威ではない、あるいは克服可能という錯覚にさえ陥っていた。まさか21世紀になって、このような事態になろうとは想像すらしていなかったが、少なくともCOVID-19創薬については、日米のレベルの差を見せつけられた。勝ち負けではないと思うが完敗と言っても過言ではないだろう。我が国の多くの臨床医について言えば、しっかりとした臨床薬理学と治療学の知識や経験がある人は非常に少ない。一般的な臨床医にとっては、臨床薬理学と治療学 (Clinical Pharmacology and Therapeutics)自体が重要な臨床医学分野という認識も薄いかと思う。臨床薬理学的視点とアプローチがないと新しい治療概念を実際の臨床に繋げていくことは難しい。パンデミック下という特殊な状況に限らず、創薬育薬を成功に導くには、臨床薬理の専門家と様々な診療領域の臨床医がしっかりと協働する必要があることを再認識しなければならない。このセッションでは、筆者が関わったCOVID-19の治療薬開発を例に、ファーマコメトリクスの手法を応用したPBPKモデルからの薬物動態および臨床用量予測、第一相試験でのPK/PD理論にもとづいた用量探索、さらに第3相試験での検証までの一連の"predict/learn/confirm"パラダイムを示し、その開発プロセスにおいて臨床薬理専門医と臨床医がいかに協働すべきかを考えるきっかけとしたい。

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