日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-S35-4
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シンポジウム
心不全診療におけるSGLT2阻害薬の過去・現在・未来
*田中 敦史野出 孝一
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抄録

SGLT2阻害薬は2014年に血糖低下薬として国内承認されたが、上市当初は利尿剤との併用による脱水の助長など副作用に対する懸念もあり、多くの臨床医・研究者らにとって現在の心不全診療におけるSGLT2阻害薬の活況ぶりは想像しがたいものではなかっただろうか。しかし、2015年に発表されたEMPA-REG OUTCOME試験を皮切りに、CANVAS試験、DECLARE-TIMI 58試験といった心血管疾患ハイリスクの2型糖尿病を対象とした大規模心血管アウトカムにおいて、糖尿病治療薬として初めて生命予後を改善したことに加え、心不全リスクに対する顕著な抑制効果が示され、同集団に対するSGLT2阻害薬の心不全予防効果が明らかとなった。その後、糖尿病の有無にかかわらず左室駆出率が低下した心不全患者、急性心不全患者、さらには従来の心不全治療薬では難攻不落とされてきた左室駆出率が保たれた心不全患者に対しても、心不全リスクに対する一貫した抑制効果が示されるに至った。これらの臨床試験の結果から、近年の心不全領域のガイドラインにおいて、既存または新規の心不全治療薬と並び、SGLT2阻害薬が重要な心不全治療薬の柱の一つであるという国際的な認知が急速に普及し、心不全診療に大きな変革がもたらされている。本講演では、循環器・心不全領域の視点から、SGLT2阻害薬のこれまでの臨床的エビデンスに基づき、心不全診療におけるSGLT2阻害薬の過去・現在・未来について議論してみたい。

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