日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-S40-2
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シンポジウム
急性骨髄性白血病の治療の新展開
*細野 奈穂子
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抄録

急性骨髄性白血病(AML)に対する分子標的薬の開発が加速し、AML治療の新時代が到来した。FLT3阻害薬gilteritinib(2018年)、quizartinib(2019年)が米国に先駆けて承認され、2021年には、メチル化阻害薬のazacitidine(AZA)と経口薬であるbcl-2阻害薬venetoclax(VEN)がAMLに対して使用可能となった。AZA/VEN併用療法により、年齢や臓器障害などで強力化学療法が施行できず、治療法が限られていたunfit AMLに対する治療戦略は大きな変換点を迎えた。

FLT3阻害薬(gilteritinib、quizartinib)は、本邦では再発・難治FLT3変異陽性AMLに対して承認されている。FLT3阻害薬が単剤の内服で救援化学療法と比べ生存期間の延長効果を認め、若年者においては移植療法へのブリッジングとしても用いられる。海外では初発時よりFLT3阻害薬(midostaurin)と化学療法の併用療法が可能であり、治療成績の改善に伴いELN2022予後分類では、予後不良群から予後中間群に再編された。またAZA/VEN併用療法は、初発のunfit AMLを対象とした国際共同第3相試験(VIALE-A)試験において、生存期間中央値はAZA/VEN群14.7ヵ月に対して、AZA群9.6ヵ月(HR = 0.66; p<0.001)と高い有効性が示され、本邦および欧米各国でもunfit AMLに対する初回治療として広く用いられるようになった。AZA/VEN併用療法は外来治療も可能であるが、腫瘍崩壊症候群、遷延する骨髄抑制、繰り返す感染症など、従来は入院中に行われていた副作用マネジメントを外来で行う必要があり、より細やかな支持療法が必要とされている。

これらの新規治療が拡充するにつれ新たな問題点も明らかになりつつある。FLT3阻害薬、bcl-2阻害薬はいずれも低分子化合物であり、代謝経路が肝臓であることから、アゾール系の抗真菌薬をはじめとする肝代謝の薬剤との相互作用が懸念される。特にVENは高齢者で用いられる事が多く、その代謝には個人差があり、有効量と安全域が担保できる投与量の設定は実臨床の現場では困難である。新規薬剤による恩恵を最大限に享受するために、適切な患者群の選択と支持療法の拡充が今後の課題でもある。

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