日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-O01-1
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一般演題(口演)
日本人患者におけるレミマゾラムの母集団薬物動態/薬力学的解析
*小島 勇人上島 智永原 芹奈中屋 健太川村 真友平 大樹松浦 優川前 金幸角本 幹夫
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抄録

【目的】レミマゾラムは全身麻酔の導入及び維持目的で投与される超短時間作用型の全身麻酔薬である。レミマゾラムはカルボキシエステラーゼにより非活性代謝物CNS7054に加水分解されることから、臨床上問題となる薬物間相互作用や有害反応が少ない特徴を有する。従って、レミマゾラムは有効性かつ安全性の高い全身麻酔薬として注目されているが、実臨床におけるレミマゾラムの使用経験が少なく、薬物体内動態や薬効の変動要因について不明な点が多い。そこで本研究では、母集団薬物動態/薬力学的解析 (PPK/PD解析) により、日本人患者におけるレミマゾラムとCNS7054の体内動態や麻酔効果の関係を解析した。

【方法】山形大学医学部附属病院にて手術時にレミマゾラムを投与された成人患者のうち、文書にて同意を取得できた20名を解析対象とした。添付文書に準じてレミマゾラムを投与し、意識消失後1分、3分、5分に採血した。レミマゾラムとCNS7054の血中濃度はLC-MS/MS法により定量し、採血時の麻酔深度はbispectral index (BIS) 値に基づいて評価した。レミマゾラムの血中濃度推移は2-コンパートメントモデル、CNS7054の血中濃度推移は生成過程に1つのトランジットコンパートメントを組み込んだ1-コンパートメントモデルに従い、レミマゾラムの血中濃度とBIS値の関係やBISの時間推移はそれぞれ最大効果モデル、薬効コンパートメントモデルに従うと仮定し、非線形混合効果モデル法によりPPK/PDパラメータを推定した。さらに、年齢、体重、BMI値、肝機能、腎機能、併用薬が各パラメータに及ぼす影響を検討した。

【結果・考察】PPK/PD解析の結果、レミマゾラムのクリアランスは男性で増加すること、加齢に伴って血漿コンパートメントの分布容積が減少することが示された。また、麻酔効果に関するEC50値は60歳まで減少し続けるが、60歳以上では一定になることが示された。一方、CNS7054の血中濃度推移に影響を及ぼす項目は検出されなかった。さらに、性別と年齢に基づいて層別化した仮想患者集団に、添付文書に規定された用法用量でレミマゾラムを投与した際のBIS値の時間推移をシミュレートした結果、60歳以上の患者では手術に適したBIS値 (40-60) に早く到達することが明らかになった。

【結論】日本人患者にレミマゾラムを投与する際には、患者の性別や年齢を考慮することで、より有効性かつ安全性の高い全身麻酔管理が可能になると考える。

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