主催: 日本臨床薬理学会
科学的かつ倫理的に質の高い臨床研究を実施するためには、研究開発支援専門職種が相互に連携した、Quality by Designに基づく研究者支援が重要である。しかし、非臨床研究中核病院(非拠点)では、臨床研究中核病院とは異なり、支援人材の不足により研究立案段階での支援が不十分な場合が想定される。令和4年度AMED研究開発推進ネットワーク事業(乾班)において、我々は非拠点における専門職種の有効な活用とQuality by Designの実装を可能にするため、「特定臨床研究の研究計画書作成ガントチャート」(ガントチャート)、「各専門職種の役割・関与が明確に記された業務フロー」(業務フロー)、さらには人材育成と体制整備のための「研究計画立案支援のため研究支援専門職種に求められるコアコンピテンシー」を作成した。本発表では、これらの成果物について紹介する。
成果物のコンセプトは以下の通り:1)支援リソースが不足した非拠点の視点で、2)各支援職種の役割を明確化し、3)研究計画立案の各段階において、「どの専門職種が」「どの専門職種と協働して」「いつ」「何を行うか」を示し、4)専門職種の欠員を想定し代替職種を提案する。
ガントチャートでは、研究責任医師が作成する研究計画書の記載事項(10項目・95細目の確認項目を抽出)について、「どの専門職が」「いつ」「何を確認するべきか」を示した。複数の支援専門職がそれぞれの専門性に基づき確認すべき事項も想定されるため、担当の専門職を「主担当職種」「協力担当職種」と位置付けた。また、各施設のリソースの状況に応じて最低限確認すべき項目を示し、また主担当職種が不在の場合を想定し、それに代わる職種を例示した。
業務フローでは、ガントチャートに挙げた研究計画書の記載事項を、各支援専門職が具体的にどのような視点で確認するか、また記載が不十分な場合にはどのような提案を研究責任医師にすべきかを明記した。
コアコンピテンシーでは、支援職に求めるスキルを研究計画書の記載事項ごとに、初級(記載事項が適切であるか判断できる)、中級(記載事項が適切であるか判断でき、適切ではない場合に指摘ができる)、上級(記載事項が適切であるか判断でき、記載事項が適切ではない場合に修正案を提案できる)に分けて示し、教育や評価に活用できるようにした。
成果物が広く活用され、Quality by Designの実装と研究の質の向上に寄与することを期待している。