日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-O03-4
会議情報

一般演題(口演)
乾燥血液スポットを用いたチロシンキナーゼ阻害薬の治療薬物モニタリング(第1報):クリニカルバリデーション
*向 祐志近藤 健吉田 達成戸田 貴大土岐 浩介本間 真人
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】造血器腫瘍の治療に用いるBCR::ABL-チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)およびブルトン型TKIについて、血漿中薬物濃度に基づく治療薬物モニタリング (TDM)の有用性を示唆する研究結果が蓄積されている。我々は、糖尿病患者の自己血糖測定時に頻用される指先穿刺採血法により作成した乾燥血液スポット (finger-prick DBS)を用いた来院不要なTDM体制の実現を目指して研究を展開している。本研究では、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、ポナチニブおよびイブルチニブを対象としたfinger-prick DBS中濃度一斉分析法を開発し、TDMへの応用性を評価した。

【方法】DBSは1スポット当たり20 μLの血液を採取可能なMitra Clamshell (Neoteryx)で作成した。1スポットのDBSからTKIを抽出し、ISOLUTE SLE(Biotage)で精製した後、LC-MS/MS法でDBS中濃度を定量した。分析法のバリデーションを実施後、TKIs服用中の造血器腫瘍患者が作成したfinger-prick DBS中薬物濃度を定量した。本研究は、代表研究機関(菊郷会愛育病院)の臨床研究審査委員会での承認を得、多機関共同研究として、参加施設長の許可を得て実施した。研究に参加した被験者からは文書による同意を得た。

【結果・考察】TKI測定のための検量線は、すべての化合物について検討した濃度範囲内で良好な直線性を示した (R2>0.99)。日内および日間変動はそれぞれ2.6%ならびに5.4%以下であった。イマチニブを除く対象TKIを服用中の患者23名から、計39件のfinger-prick DBS検体を入手した。十分量の血液が回収されていない検体も提出されており、規定用量である20 μLの血液が回収されたDBSを少なくとも1スポット含む検体は37件であった。DBS中薬物濃度は、測定した37件中34件の検体で検量線の濃度範囲内であった。DBS中薬物濃度が検量線の濃度範囲外であった3件の検体について、finger-prick DBS作成前後30分以内に採取した血液を用いて血漿中濃度を測定した結果、DBS中濃度と矛盾しない値が得られた。

【結論】Mitra Clamshellを用いた6種TKIsのDBS中濃度一斉分析条件を確立した。確立した分析条件は、TKI服用中の造血器腫瘍患者のfinger-prick DBS中濃度測定への応用が可能であった。

著者関連情報
© 2023 日本臨床薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top