日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-P-A4
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一般演題(ポスター)
ダプトマイシンとベザフィブラートの併用による横紋筋融解症の早期発見およびその症状悪化を未然に防いだ一例
*上原 渉知念 徹上里 安範大野 慎一郎高槻 光寿潮平 英郎石井 岳夫諸見 牧子中村 克徳
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抄録

【目的】メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 治療薬として使用されるダプトマイシン (DAP) の代表的な副作用として,クレアチニンフォスフォキナーゼ (CPK) の上昇を伴う横紋筋融解症が知られている。また,高脂血症治療薬ベザフィブラート (BEZ) においても,重大な副作用としてCPK上昇を伴う横紋筋融解症が知られている。これまで,DAPとスタチン系高脂血症治療薬の併用による横紋筋融解症発症リスクの上昇は多く報告されているが,フィブラート系薬との併用による同様の報告は無い。今回我々はDAPとBEZ併用による横紋筋融解症が疑われた患者の症状と所見を早期に発見し,悪化を未然に防いだ一例を経験したので報告する。【症例】[患者] 65歳 女性,[診断名] 原発性肝細胞癌 , MRSA菌血症 [内服薬] BEZ, 他数種類の内服薬を服用されていた。抗菌薬適正使用支援チーム (AST) ラウンドにて,MRSA菌血症に対してDAPの使用開始を確認した。当該患者の処方内容を確認すると,BEZの内服があることが判明した。DAP開始時のCPK値は18 U/Lであった。DAP開始8日目にCPKの上昇が確認された(2016 U/L)と同時に,患者から筋肉痛症状があることを聴取した。上記を担当医師へ速やかに報告し,DAPとBEZの両薬剤中止を提案した結果,どちらも中止となった。DAPとBEZの中止後5日目にピークアウト(334 U/L)し筋肉痛症状も改善した。DAP終了後も感染兆候の再燃なく治療経過は良好であった。CPK上昇の被疑薬であったBEZは中止のまま退院となった。横紋筋融解症に対する治療は特に要さなかった。【考察】DAPとBEZは,どちらも骨格筋の融解・壊死を誘発し,その結果横紋筋融解症を発症させるリスクを有した薬剤として知られているが,どちらの添付文書においても両薬剤の併用が禁忌や注意に該当していない。今回の症例では,AST活動でDAP使用開始を早期に確認できた。またPBPMの一環である医師の処方支援にて,当該患者のBEZ内服に気が付いた。さらに発表者は,これまでにDAPとロスバスタチンの併用による横紋筋融解症の症例を実体験していた。これらを以って,横紋筋融解症の症状と所見の早期発見に繋げることができた。本症例は,医師と綿密に連携し患者の治療へ多角的に協働参画したことで,横紋筋融解症の症状悪化を未然に防げた一例となった。

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