主催: 日本臨床薬理学会
【目的】全身循環に到達し作用を発現する全身適用を目的とした薬物の場合は、血中薬物濃度と効果を関係づけたPK/PDモデリングが行われている。しかしながら、局所皮膚適用製剤の場合は効果発現因子である角層中薬物濃度と効果の関係を把握することが求められるが、ほとんど行われていない。そこで、本研究では、ベタメタゾン単回塗布時の蒼白化反応の報告値を対象に、角層中薬物濃度と蒼白化反応の間の関係を解析する事を試みた。【方法】Pershingらが報告したデータを引用した(Arch Dermatol, 130:740, 1994)。1)塗布時間依存性の検討:ベタメタゾン0.050%クリーム製剤を0.5, 1, 2, 6, 16時間塗布し、角層中薬物濃度及び蒼白化反応がモニターされたデータを用いた。2)製剤濃度依存性の検討:ベタメタゾン0.020%, 0.040%, 0.050%及び0.063%クリーム製剤を6時間塗布し、角層中薬物濃度及び蒼白化反応がモニターされたデータを用いた。角層中薬物濃度は、製剤から0次で吸収され、角層からは線形1次で消失するモデルを仮定した。次に蒼白強度を蒼白生成速度と線形1次消失で表現し、ベタメタゾンの累積角層中薬物濃度時間曲線下面積と蒼白生成速度をEmaxモデルで関連付けた。病態時の皮膚透過性の変動を考慮し、構築したモデルの感度分析も併せて検討した。【結果・考察】1)塗布時間依存性の検討:角層中濃度は2時間の塗布でプラトーに到達している事から、角層中薬物濃度時間推移を表現するモデルを決定した。次に蒼白強度の時間推移において、塗布時間に依らず8時間後にピークに到達し,その後低下することを1次吸収、1次消失モデルを仮定したPDモデルで表現できた。2)製剤濃度依存性の検討:角層中濃度が製剤濃度依存的に増加する結果を表現できた。一方、蒼白強度の時間推移に対し、製剤濃度に依らず8時間後にピークに到達し,その後低下することを表現できた。最後に、角質層バリアが破綻して薬物透過性が亢進した場合のベタメタゾン単回塗布時のPK/PDをシミュレーションしたところ、角層中濃度が上昇したとしても、蒼白強度への影響は限定的であると予測された。【結論】ベタメタゾン適用後の角層中薬物濃度、蒼白化反応の時間推移データを対象としたPK/PDモデル解析により、局所角層中薬物濃度と作用強度の関係を定量的に把握することができ、PK/PDモデルによる把握が局所皮膚適用製剤においても有効なツールとなることが明らかとなった。