主催: 日本臨床薬理学会
【目的】局所皮膚適用製剤で、作用部位が角層又はそれより下部にある医薬品の場合、角層内薬物濃度(Cc)が同等であれば治療上の同等性は保証される。局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドラインでは、生物学的同等性を実証する基本的な試験法は正常皮膚を対象に定常状態若しくはそれに近い状態にあるCcを指標に製剤間の比較を行う(皮膚薬物動態学的試験;粘着性のテープで薬物投与部位の角層を剥離し、Ccを測定)。しかし、製剤の投与部位が病態である事が多く、バリア機能の変動によりCcが変化し、正常皮膚で評価する同等性評価との乖離の可能性が指摘されるが、それら影響は明らかにされていない。そこで、正常皮膚におけるCc推移の実測値を表現するモデルを構築し、バリア機能の変化を想定したsimulationによってCc推移、効果、製剤間の関係を推定した。【方法】simulationはMicrosoft Excell、Phoenix WinNonlin NLME 8.3(Certara)を用い行った。正常皮膚におけるCcの時間推移は医療用医薬品最新品質情報集から引用し、実測された時間推移を表現するモデル1(ゼロ次吸収、1次消失)、モデル2(1次吸収、1次消失)を確立した。これらモデルに対し、角層バリアが正常な場合の吸収速度定数ka値を0.7,1.0,1.3倍に規定した3製剤のCc推移を推定した。次に、バリア機能が低下した場合を想定し、正常時のka、薬物角層クリアランス(CL)あるいは消失速度(kel)を1,2,4倍した場合のCc推移を推定した。Ccと効果の関係はEmaxモデルで表現し推定した。【結果・考察】バリア機能が低下した条件としてkaを正常時の1,2,4倍した場合、CLを正常時の1,2,4倍した場合に、製剤間のCcの相対関係は、モデル1の場合、0.7,1.0,1.3を示し、一方、モデル2ではka=1.0においてピーク濃度を示す時間付近での角層内濃度は、kaを1,2,4倍した場合でも、kelを1,2,4倍した場合でも、製剤間でほぼ同一値を示した。【結論】角層バリア機能が低下した場合にも、Ccは、モデル1では製剤間差は維持され、モデル2では、却って製剤間差は縮小する事が推定された。正常皮膚のCcを指標とした評価法は、生物学的同等性評価方法として対応できていることが示された。