日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-P-C4
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一般演題(ポスター)
急性骨髄性白血病患者における抗がん剤薬物動態に及ぼす年齢の影響の検討
*時澤 秀明岩野 麗子宮川 直将慶野 大横須賀 とも子岩崎 史記後藤 裕明甲斐 維子柳町 昌克
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抄録

【目的】

急性骨髄性白血病(AML)は小児において急性白血病の約25%を占めている。年少児(2歳未満など)において、治療関連合併症軽減のため抗がん剤投与量を減量することが多いが、血中濃度や薬物動態および治療成績に及ぼす影響は不明である。体表面積通りの投与群(年長児)と体重補正での減量投与群(年少児)の2群においてAMLの治療に使用するそれぞれの抗がん剤が同じ血中濃度であるか比較することは、乳幼児のAMLに対する適切な治療法の開発において重要である。今回各年齢層の抗がん剤血中濃度を比較することで、年齢毎の薬物動態の相違について検討した。

【方法】

AMLと診断され、エトポシド、シタラビン、ミトキサントロン、イダルビシンによる化学療法を施行した18歳未満の患者を対象とする。本研究は神奈川県立こども医療センター倫理審査委員会の承認ならびに患者もしくは保護者の同意を得て施行した。年少児の体重補正換算式を以下に示す。

「投与量 = 体表面積あたりの投与量 × {体重(kg)} ÷ 30」

1) 各抗がん剤について検体採取ポイントを設定し、血液検体の採取を行う。

2)高速クロマトグラフィータンデム型質量分析装置を用いて、逆相カラムを使用して各試料を分離し、血漿中の薬物濃度を測定する。

3)年齢毎の各抗がん剤の血中濃度を比較検討する。

【結果】

血漿中濃度平均を以下に示す。

2歳未満は3例、2歳以上は7例であった。

エトポシド(μg/mL):トラフ(<2y)1.6±2.2、ピーク(<2y)13±2.0、トラフ(≧2y)1.6±3.0、ピーク(≧2y)14±3.3

Ara-U(Uracil arabinoside)(μg/mL):ピーク(<2y)49、投与後2時間(<2y)8.3、ピーク(≧2y)46±3.7、投与後2時間(≧2y)11±2.7

ミトキサントロン(ng/mL):ピーク(<2y)231±183、投与後2時間(<2y)4.5、ピーク(≧2y)404±141、投与後2時間(≧2y)8±7.8

イダルビシン(ng/mL):ピーク(<2y)573±360、投与後2時間(<2y)7.7±6.5、ピーク(≧2y)430±312、投与後2時間(≧2y)15.4±7.4

【結論】

ミトキサントロンはピーク濃度の2群間比較において、2歳以上が高い傾向が見られた。2時間後値が同程度であることから、代謝は2歳未満において速い傾向となった。ミトキサントロンにおいては2歳未満での過度な減量が示唆された。その他の薬剤の各測定ポイントでの2群間比較ではほぼ同等の結果であったが、今回は少数例での比較であり、今後さらなる採血ポイントや年齢群間で比較を行う必要がある。

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