主催: 日本臨床薬理学会
【目的】福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)の治療薬として開発中であるNS-035の本第Ι相治験は、First in Human (FIH)試験であり、メカニズムや安全性を熟知した開発者が主施設の責任医師を務め、研究班内にて小児患者を紹介する計画とした。途中から、対象を研究班外に拡大し、組入れが完了する見込みとなったため報告する。また、治験参加への患者負担について振返り、考察をする。【方法】[1]ガイダンス(薬生薬審発1225 第1号)を参考に2施設の実施計画とし、主施設はコホート内2/3例を組み入れるため、コホート毎に、研究班内の2ルートより小児患者の紹介を受け、主施設では、患者への詳細説明、初診を経て同意取得に至った。 [2]対象を研究班外に拡大し、神経・筋疾患医学情報登録・管理機構や患者会、医師のコミュニティー、分担施設より紹介を受けた。治験調整事務局は、コホートごとに治験のスケジュールを確認し、組入れ時期を相談しながら紹介の依頼を進めた。【結果・考察】[1]治験届出の30日調査にて、当該ガイダンスに沿った実施体制の確認が行われ、FIH試験を2施設で開始した。研究班ルート1からの候補者7例(関西圏在住)のうち4例の紹介を受け、3例が同意に至り、ルート2からは、候補者6例(関東圏在住)のうち3例の紹介を受け、2例の同意を得た(うち1例はスクリーニング脱落となった)。低用量のNS-035が投与される1及び2コホート(全4)であったが、患者と信頼関係のある医師からの紹介により、組入れが可能となった。 [2]主施設への問合せの入電が18件、患者会から5件、医師のコミュニティーから6件、開発者であり研究班医師より2件の連絡を受け、それぞれ1名ずつ同意取得(最終候補者については返事待ち)を得た。 [1]だけでは限界がある中、対象を広げることで中断せずに組入れが進んだが、同意取得に時間を要し、試験期間を1年延長した。本リクルートでは、特に、家族の負担、車いすによる移動の困難さ、地理的な交通状況(積雪等)などに直面し、途中、サテライト施設の検討も行った。不参加となり実施に至らなかったが、事前に検討する必要があった。候補者とのWeb面談やeコンセント等のDecentralized Clinical Trialの活用も有用と考える。【結論】事前にリクルート方法を立案し、また、対応策を打出すことで、組入れを進めることができた。患者負担につき、事前に、軽減するための方法や手段を検討する取組みが重要である。