主催: 日本臨床薬理学会
【背景】
近年の医薬品開発では、世界同時開発が一般的になり、国際共同治験による開発戦略が主流になってきている。また、小児医薬品開発において、疾患経過及び期待される医薬品への反応が、小児及び参照集団(成人又は他の小児集団)の間で十分に類似していると推定できる場合に、参照集団の安全性及び/又は有効性データを外挿し評価することができる(ICH E11A)とされている。しかしながら、日本での小児医薬品開発では、ICH E5 に基づく民族的要因の評価から、戦略は複雑化し、企業が策定した小児外挿戦略が規制当局から受け入れられるかどうかに不確実性が生じる。
【目的】
本研究では、当社で近年製造販売承認を取得した医薬品の小児適応について、ICH E11A及びICH E5に基づき、試験開始時の戦略案と試験結果から小児医薬品開発戦略を評価した。また、これらの情報を文献情報と比較し、今後の日本における最適な小児医薬品開発戦略を考察した。
【方法】
当社で近年製造販売承認を取得した小児医薬品を対象に、ICH E11Aの基準に基づき、(1)疾患類似性、(2)薬理学的類似性、(3)臨床反応類似性の観点から、試試験開始時の戦略案と試験結果を評価した。また、民族的要因については、文献調査に加えて、小児試験又は成人試験における有効性、安全性、PKの国内外差を評価した。
【結果・考察】
ICH E11A の基準である(1)疾患類似性、(2)薬理学的類似性、(3)臨床反応類似性の観点から、小児医薬品開発戦略の妥当性が示された。さらに、小児患者においても成人患者と同様に臨床的に有意な国内外差はないことが示された。
【結論】
本研究で対象となった試験では、ICH E11Aに基づく小児医薬品開発における外挿戦略が適切であることが明らかになった。また、成人試験において民族的感受性が明確になっている場合には、ICH E5に基づく日本人による評価を小児試験内ではしない医薬品開発戦略を検討する余地を見出した。これらの結果は、小児医薬品開発戦略の更なる最適化に適用され、日本における早期小児医薬品開発を実現する可能性があると考えられる。