主催: 日本臨床薬理学会
【目的】
新規モダリティの一つとして注目される核酸医薬は、低分子医薬品や抗体医薬品とは異なる薬物動態学的特性を有することから、その特性を踏まえてヒト初回投与試験(FIH試験)を計画する必要があると考えられる。また、国内外で同時開発あるいは海外に先駆けて国内で開発される開発品も多いと想定され、日本人被験者を対象としたFIH試験が今後増加していくものと考えられる。以上を踏まえ、本研究では日米欧で承認された核酸医薬品について、FIH試験がどのような試験デザインで実施されているかを横断的に調査・整理する。
【方法】
2007年以降、2023年8月までに日米欧で承認された核酸医薬品のうち、組織・細胞内に取り込まれて機能発現することが想定されているアンチセンス医薬品及びsiRNA医薬品の計14品目を調査対象とした。調査方法としては、公開されているPMDAの審査報告書及びCTD(モジュール1及び2)、FDA Review、EMA CHMP Assessment Report及びClinicalTrials.govから、非臨床試験成績、FIH試験(実施時期、試験デザイン及び試験成績)、開発対象疾患、民族差に関する検討、開発戦略及び承認用法・用量の情報を抽出し、整理した。
【結果・考察】
FIH試験の試験デザイン(初回用量、用法、群、投与経路、観察期間、ステップアップ等)は、各品目ごとに異なっており、一概に核酸医薬品の種別で大別されるものではなかった。各核酸医薬品の薬物動態学的特性、安全域、PK/PD、対象疾患等の関係を考慮したものと推測され、例えば、分子構造が互いに類似するGalNAc-siRNAを比較しても、4品目中3品目は単回投与と反復投与が実施されていたが、1品目は単回投与のみであった。また、安全性等の観察期間もそれぞれで異なっていた。FIH試験における日本人被験者の組み入れについては、14品目中3品目で実施されており、それぞれで日本人被験者の試験実施方法は異なるが、いずれも日本人被験者の安全性確保を担保した上で海外に遅延なく開発するための工夫が認められた。
【結論】
承認品目数が限られた現段階の調査では、核酸医薬品のFIH試験の試験デザインは各開発品目の特性に応じてケースバイケースであり、現段階では統一的な設定基準や考え方は見出せなかった。今後、核酸医薬品の審査経験や承認例が蓄積されるにつれ、核酸医薬品の薬物動態学的特性等を踏まえた一定の考え方が明確化するものと考えられる。