主催: 日本臨床薬理学会
【目的】山口大学医学部附属病院(以下、当院)では、地方大学の立地的な状況や新型コロナ感染症流行の影響等で、治験受託数の減少に直面している。そこで本件の対策の1つとして、治験施設支援機関による治験施設選定調査(以下、SMO調査)の回答率が低い点に着目し、これまでの診療科の医師自身が調査票を作成する手順を見直した。具体的には、2022年4月よりSMO調査担当者が診療科と面談を行い、調査票の作成支援を行う手順(以下、新手順)を導入し、治験依頼者による要件調査実施数及び当院での選定数の増加を目指した。今回、新手順の導入効果と、導入に伴い実施した追加対策について報告する。【方法】 SMO調査の現状について、新手順導入前の2021年度と導入後の2022年度で比較した。また、新手順導入後に寄せられた診療科からの意見を基にSMO調査担当者より情報収集を実施し、追加対策の検討を行い、実施した。【結果・考察】SMO調査の件数は、2021年度は69件、2022年度は178件であった。診療科の調査票回答数は2021年度の31件(44.9%)から2022年度は99件(55.6%、面談実施による調査票作成支援も含む)に増加した。また、要件調査実施数は、2021年度の1件(1.4%)から2022年度は23件(12.9%)に増加し、当院選定数も1件(1.4%)から6件(3.4%)に増加した。この効果の要因として、新手順によりSMO調査担当者から診療科への確認が積極的に行われ、診療科の意識及び調査票の精度が向上した可能性が考えられた。診療科から特に要望が強かった調査の進捗情報についてSMO調査担当者より情報収集した結果、SMO調査には施設選定目的のみならず初期段階の調査も含まれていること、また、SMO調査担当者側へも治験依頼者からの情報が届かないことが確認された。本情報を基に、追加対策として、診療科へ希望する調査を確認し、依頼する調査案件の調整を図った。また、進捗情報を各診療科と共有するため、希望の多かった6ヵ月の頻度でフィードバックを行うこととした。【結論】 新手順導入後、当院での選定数増加等一定の効果が得られたが、SMO調査に対応する診療科の理解・協力を得るためには、診療科への適切な情報提供も必要であると考えられた。今後も治験受託数増加を継続するために、積極的にSMO調査に対応するとともに、診療科の意見から課題を検討し、双方の調整を図りながら進めていく必要がある。