主催: 日本臨床薬理学会
抗菌薬はグリコペプチド系薬、アミノグリコシド系薬、アゾール系抗真菌薬においてtherapeutic drug monitoring(TDM)が推奨されている。TDMでは血中濃度を測定し、目標濃度を指標に投与量の最適化が行われるが、血中濃度測定値そのものに加えて、測定値を活かす場合にはソフトウェアが有用である。例えば、血中濃度-時間曲線下面積(area under the concentration time curve:AUC)のベイジアン予測による推定、半減期の推定による中毒域からの休薬期間・投与再開時期の設定、非線形薬物動態における濃度-時間曲線のプロット、など様々である。演者は病院薬剤師としての目線を持って、病院薬剤師が使いやすいTDMソフトウェアを追求し、マイクロソフト社のエクセルをプラットフォームとする「BMs-Pod」を開発するに至った。そもそもは薬物毎に異なるソフトウェア使用方法習得の煩雑さに対し、一つのソフトウェアで様々な薬物の解析を兼ね備えることを求めた。さらに機能を拡張してきており、例えば血中濃度測定値を必要とせず必要なPK/PD目標値の達成率を推定するモンテカルロシミュレーションの機能や、母集団薬物動態モデルのユーザーによる調整・追加などを可能とした。ゆえにBMs-Podは、母集団薬物動態モデルや血中濃度測定値が持つ情報を臨床において薬剤師が最大限に活用するために、汎用性が高い統合的TDM解析ソフトウェアであると考える。
演者は、BMs-Podによる様々な薬物におけるシミュレーションの実施を基に得られた情報を、臨床において最大限に活用してきた。本講演ではそれらを紹介しつつ、統合的TDM解析ソフトのさらなる発展について考えてみたい。