日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-S04-3
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シンポジウム
免疫チェックポイント阻害薬による肝細胞癌治療
*工藤 正俊
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抄録

現在日本で承認されている肝細胞癌に対する免疫チェック阻害剤はアテゾリズマブ+ベバシズマブ、デュルバルマブ+トレメリムマブ、デュルバルマブ単剤の3レジメンである。最近の大きな流れとして肝細胞癌は全てのステージにおいて局所治療と全身薬物療法のSequence/Combination/Harmonizationが重要となってきたことである。最近アジュバント試験においてIMbrave050試験が成功し、アテゾリズマブ+ベバシズマブがハザード比0.72(p=0.012)で無再発生存期間を有意に延長したことが2023年4月の米国癌学会(AACR)で発表された(QinS, Kudo M, et al. Lancet,2023)。これまで多くのアジュバント試験が失敗した中で世界で初めての成功であり、歴史的な快挙である。このことによりEarlystage(BCLC-A)からIntermediate stage(BCLC-B)、advancedstage(BCLC-C)まで幅広く薬物療法と局所治療・切除とのコンビネーションもしくはsequential治療が重要な役割を果たすようになってきた。言い換えると薬物療法は全てのステージの肝細胞癌において患者にbenefitを与えるということである。Intermediatestageでは日本で行われたPhase II試験のREPLACEMENT試験においてアテゾリズマブ+ベバシズマブがup-to-sevenoutのIntermediate stage肝癌に有効であることが示された。さら多施設の概念検証試験(Proof-ofconcept試験)によりアテゾリズマブ+ベバシズマブ導入後の切除、ラジオ波、TACEによるcurative conversionによりclinicalCRおよびdrug freeが20~30%程度に得られることが示され、薬物療法と局所治療との組み合わせがIntermediatestageでは非常に重要であることが示された。さらにadvanced stageにおいても米国とアジアで行われたphaseIb/II試験であるMORPHEUS試験においてアテゾリズマブ+ベバシズマブ+tiragolumab(抗TIGIT抗体)の組み合わせが奏効率42.5%(RECISTv.1.1)および55.0%(modified RECIST)と極めて良好なレスポンスを示し、phaseIII試験IMbrave152が開始されることになっている。また最近の傾向としてレスポンスの高い薬剤が登場してきたことによりresponderがSDやPD症例よりも長期生存が得られることが明らかとなってきた。したがって、高い奏効を得るということはより多くの患者さんがより長く生存するということを意味している。

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