日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-S08-4
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シンポジウム
抗菌薬臨床試験の実情と課題~治験依頼者の立場から~
*大田 誠
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抄録

国内での抗菌薬の承認数および全医薬品の承認数に占める抗菌薬の割合が経時的に減少傾向にあり,欧米で承認または開発中の新規抗菌薬について日本で開発が進められていないものも多く,欧米とのドラッグ・ラグが指摘されている[1]。

新規の抗菌薬の開発が困難な理由についてはこれまでも度々議論がなされており,新規抗菌薬の収益性の低さや新規作用機序を有する抗菌薬の創薬に挑む難しさなどが課題として挙げられている。日本における感染症領域の開発品目の減少に伴い,継続的に治験の実践経験を積むことができず,十分な治験実施体制を維持することが困難になることも懸念される。日本における抗菌薬開発の実情と課題を認識し,治験を迅速かつ確実に進められる環境を構築する取り組みが望まれる。

本講演では,弊社の日本における抗菌薬開発を通して経験した課題について,抗菌薬の治験の特徴に触れながら整理する。例として,同一医療機関内の他科と連携した患者登録,急性期感染症の治験に対応できる治験スタッフのリソース確保,在宅診療の導入・活用などが挙げられる。また,国内での新薬の承認審査において日本人データの集積が依然として重要視され,短期間での開発が求められる中,Modeling and Simulationの手法を開発段階に応じて戦略的に取り入れたModel Informed Drug Development(MIDD)のアプローチにより臨床開発の効率と成功確率を向上させる試みや,全世界のデータを最大限活用することで国内でも早期承認を目指す取り組みも紹介する。

[1]湯淺晃, 吉田昌生, 俵木保典. 日本と欧米の抗菌薬開発の状況と課題. 政策研ニュース. 65. 2022:https://www.jpma.or.jp/opir/news/065/01.html

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