主催: 日本臨床薬理学会
脳卒中は、重大な公衆衛生上の課題である。近年の血栓溶解療法、機械的血栓回収療法といった急性期治療の発展により、脳梗塞の転帰は劇的に改善した。しかし、今なお約半数に何らかの後遺症が残り、脳出血に至っては現在も有効な治療法が確立されておらず、新たな治療法の開発や、信頼性の高いエビデンスの創出が必要不可欠である。臨床試験はこのような医療開発に欠かせない要素だが、臨床試験運営の観点から興味深いのは、脳梗塞急性期治療のエビデンスの確立に貢献した著名な臨床試験のうち、少なくない数が、世界各国のアカデミアの研究者を中心に企画・運営されていたことである。しかしその一方で、脳卒中を対象とする臨床試験には、その疾患特性や医療体制に関連した特有の課題があり、脳卒中の臨床試験に携わる者は、これらの課題を熟慮したうえで、試験の価値を最大化させるためのQMSの実装を目指す必要がある。そこで本発表では、主に研究者主導臨床試験の企画・運営の観点から、脳卒中とりわけ脳卒中急性期を対象とする臨床試験の現状と課題について述べるとともに、脳卒中急性期臨床試験でのQMS/RBAの実装に関して、現在進行中の2つの臨床試験での試みを具体例とともに紹介する。