主催: 日本臨床薬理学会
近年、臨床研究において、リスクベースドアプローチ(以下、RBA)を基本とする品質マネジメントシステム(以下、QMS)のニーズが高まっている。それは、非臨床研究中核病院(以下、非臨中)でも例外ではない。高齢者医療を軸とする国立長寿医療研究センター(以下、NCGG)において、より実用的なエビデンスを発出するためには地域の医療・介護施設との研究での連携体制は必要不可欠である。ところが、地域の医療・介護施設では、非臨中に該当する大学病院や公的機関以上に臨床研究実施体制そのものが不十分な状態である場合が少なくなく、一定の品質が担保された高齢者医療に関連する臨床研究を実施する上で地域の医療・介護施設におけるRBAに基づくQMSへの対応は避けては通れない課題である。それを踏まえて、NCGG 先端医療開発推進センター(以下、ICTR)では、NCGGを中心としたQMSを取り入れた地域連携研究グループの整備を最終目標とし、そのためのFirst stepとしてリソースの乏しい研究機関でも実現可能なモニタリングとデータマネジメント(以下、DM)を軸とするQMSの整備と、地域の医療・介護施設を対象とした研究教育・支援ネットワークの構築を進めている。
モニタリング体制については、モニタリング未経験の研究者や研究補助者でも実施可能な研究者モニタリングをコンセプトとして、必要な資材を整えOn the Job Training(以下,OJT)を取り入れ運用している。モニタリングの品質レベルは、事前に作成したリスク判定チェックリストを参考に4段階に分類した後、研究者の要望や実施体制から想定されるリスクに応じて調整する形で設定している。現在モニタリングに加えDMの体制構築を進めている。
研究教育・支援ネットワークにおいては、「全てのキホンは教育」と捉え、地域の医療・介護施設と連携し、研究デザインや研究倫理、統計解析など臨床研究を実施する上で必要な知識や技術に関する研修を開催している。さらにICTRとの共同研究によるOJTを組み合わせることで臨床研究の実施に繋げている。これまでは主にリハビリテーション専門職を対象としていたが、現在は、その他の職種も教育・支援対象として運用を進めており、健康長寿に寄与するエビデンスの創出につなげていきたい。なお、本発表では現在準備を進めている地域の医療・介護施設においても実装可能なRBAについても報告する予定である。