日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_2-C-S17-3
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シンポジウム
ラニナミビルオクタン酸エステル水和物の肺内薬物動態 ~吸入粉末剤とネブライザ用製剤の比較~
*東山 馨
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抄録

ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(LO)は、単回吸入投与でA型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防効果を示す。本剤はプロドラッグであり、吸入投与後、活性代謝物であるラニナミビルがインフルエンザウイルスの増殖部位と考えられる気道等の標的器官でノイラミニダーゼを長時間にわたり選択的に阻害することでウイルス増殖を阻害する。本剤の吸入投与には吸入粉末剤(DPI)またはネブライザ用製剤(NEB)が用いられ、DPIでは治療及び予防、NEBでは治療のみが適用となっている。

本剤はDPIが先行して開発、治療を適用として承認され、さらに予防適用を取得した。その後、DPI使用が困難な患者に対して新たな治療の選択肢となり得るNEBの開発に着手した。DPIの予防適用の開発にあたり、通常のヒト血漿中濃度推移の検討に加えて、日本人健康成人を対象に気管支肺胞洗浄法(BAL)により肺内薬物動態を評価し、本剤が単回吸入投与で長時間にわたり肺胞粘液中に存在することを確認した。NEBの開発では、用量設定にあたりin vitro微粒子量も参考に、BALにより肺内薬物動態を評価し、DPIでの挙動と比較することにより至適投与量を設計し、用量設定試験は実施せず検証試験を実施、承認申請を行った。

BALにより肺内薬物動態を検討した結果、DPI及びNEBいずれの単回吸入投与時も肺胞粘液中の活性代謝物濃度はすべての時点でノイラミニダーゼのIC50値を大きく上回り、ウイルス増殖抑制に十分な濃度が維持されていることが確認された。本結果は、本剤のプロドラッグであるラニナミビルの長時間にわたる有効性及びその設定された投与量の妥当性を裏打ちするものと考えられた。

肺内薬物動態評価は、肺局所を作用部位とする薬剤の有効性・安全性の予測や用量用法設定に重要な役割を持つものと考えられた。

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