日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_2-C-S23-1
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核酸医薬の基礎から最新動向まで
*小比賀 聡
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抄録

近年、低分子医薬品や抗体医薬品に続く新たな創薬モダリティとして核酸医薬品に大きな期待が寄せられている。従来の医薬品の多くは、疾病に関わる標的タンパク質に結合し、その機能を阻害することで薬効を発揮するが、アンチセンス核酸やsiRNAといった核酸医薬品は、疾患に関連する遺伝子のpre-mRNAやmRNAなどを標的としており、その機能を制御することで薬効を示す。このように核酸医薬品は、従来の医薬品とは作用機序が大きく異なることから、これまで治療法の開発が進んでいない難治性疾患に対する新たな治療につながる可能性を秘めている。また、疾患の原因遺伝子が特定されれば、比較的早期に医薬品開発につながるという点も核酸医薬品の大きな特徴である。しかしながら、高い薬効を示す核酸医薬品の開発には、綿密な配列設計に加えて、適切な化学修飾や人工核酸の利用などが必要不可欠である。また新たな創薬モダリティであるがゆえに、その臨床応用に向けては、安全性の確保も極めて重要となる。

我々は、アンチセンス核酸の有効性を向上させるためには、標的RNAに対する結合力の向上が不可欠であると考え、ヌクレオシドの2'位と4'位間を共有結合で架橋した「架橋型人工核酸(2',4'-BNA/LNA)」を設計し、世界に先駆けその合成に成功した。この架橋型人工核酸をアンチセンス核酸に導入することで、標的となるRNAとの結合親和性は飛躍的に高まり、アンチセンス核酸の効果は顕著に向上した。一方、2',4'-BNA/LNAなどの初期の架橋型人工核酸のみでは、医薬品として必要な生体内安定性が十分に得られないことから、2',4'-BNA/LNAは核酸のリン酸部分の修飾の一種であるホスホロチオアート(PS)結合と組み合わせて用いられる。PS結合との併用によりアンチセンス核酸の有効性は向上するものの、PS結合がタンパク質と非特異的な相互作用をすることに起因してか、一部の配列では毒性を示すことも報告されている。そこで我々は、架橋型人工核酸の特徴である標的RNAとの高い結合親和性は維持しつつ、PS結合を必要としない、すなわち毒性低減につながる新たな人工核酸の開発に取り組んでおり、これらの技術を利用した難治性疾患治療のためのアンチセンス核酸の設計・合成・評価を実施している。

本発表では、核酸医薬研究の最新動向を化学的側面から概説するとともに、最近の我々の人工核酸開発に関する取り組みを紹介したい。

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