日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_2-C-S23-2
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シンポジウム
siRNA核酸医薬品の開発と今後の展望
*程 久美子
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抄録

核酸を用いた医薬品開発の進歩はめざましく、小分子干渉RNA(small interfering RNA , siRNA)の臨床的応用も過去5年程度で急速に進展した。siRNAは、1998年に線虫で発見されたRNA干渉(RNAi)と呼ばれる、もともと生体に備わった分子機構を利用することで目的遺伝子の発現を抑制する。siRNAはたった21塩基の2本鎖RNAで、塩基配列の相補性というシンプルな機構によって標的mRNAを識別するため、精力的に臨床応用へ向けた研究開発が進められた。RNAi発見からちょうど20年目にあたる2018年には米国アルナイラム社が世界初のsiRNA医薬品の開発に成功し、現在までに4遺伝子に対する5種類の第一世代のsiRNAが認可されている。標的とする4つの遺伝子はすべて肝臓で発現する遺伝子であり、3つの遺伝子についてはノックアウトマウスが作製されているが、いずれも目立った異常は見られず致死性もない。したがって、これらの標的遺伝子を完全に抑制しても、生体機能の維持に問題はないと考えられる。しかし、がんや神経変性疾患などの遺伝性疾患の原因となる遺伝子では、1塩基変異や挿入・欠失などによる遺伝子機能異常が直接疾患の原因となる場合が少なくない。一方で、このような遺伝子のノックアウトマウスでは致死的な影響がみられる場合が多いことから、これらの野生型遺伝子は生体機能を正常に保つために必須と考えられる。そこで、我々は野生型遺伝子の発現には影響を与えることなく、変異をもつ遺伝子のみを特異的に抑制可能な第二世代のsiRNAとして1塩基多型識別可能なsiRNA(single nucleotide polymorphism-distinguishable (SNPD) -siRNA)を開発した。本講演では、がん原遺伝子であるKRASを初めとする遺伝子に対するSNPD-siRNAの有効性とその分子基盤について報告する。

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