主催: 日本臨床薬理学会
近年、医療の中で薬物療法とそれを支える臨床薬理学の重要性が高まっており、臨床薬理学を担う人材の育成が求められている。臨床薬理研究振興財団が主催する臨床薬理学集中講座は、若手の医師及び薬剤師等が臨床薬理学を体系的・集中的に研鑽する場として2016年から開講され、薬物療法の基本を実践し、臨床試験を通じたエビデンスの創造・発信のできる研究者育成を目指している。
臨床薬理学集中講座の受講生が、臨床薬理学について本講座で学んだ体系的な知識を活かせる臨床研究の場が必要と考え、集中講座参加者のネットワークを活用した多施設共同研究が実施できないか模索してきた。その中で、医師及び薬剤師等が協同して行うことができるテーマとして、「ポリファーマシー」が挙げられた。
演者が所属する国立長寿医療研究センターは、高齢者の心と体の自立を促進し、健康長寿社会の構築に貢献することを理念としており、高齢者医療における問題点の一つであるポリファーマシーの解消に取り組んできた背景がある。その活動の一環として、ポリファーマシーおよび薬剤起因性老年症候群を簡便にチェックできるスクリーニングシートを開発してきた。本シートを用いることで、病棟薬剤師が入院患者の持参薬鑑別の際にポリファーマシーに関する情報を収集し、さらに薬剤起因性老年症候群の評価も行うことが可能となる。本シートは国立長寿医療研究センターを含むナショナルセンターの臨床現場で活用可能なことは確認されているが、ナショナルセンター以外の大学病院や市中病院にも実装できるかどうかが課題となっている。
そこで臨床薬理研究振興財団が作成したホームページの掲示板機能を利用して、集中講座参加者を中心に希望者に対して本シートを配布した。これらの施設を対象に、ポリファーマシーに関する知識に偏りが出ないよう一定のレクチャーを実施した上で、まずは業務として本シートを導入し、ポリファーマシーの問題点の検出率や薬剤師の業務量の変化、アンケート調査による実際の使用感などを評価する多施設共同研究を計画している。
今年度のフォローアップセミナーでは、本ポリファーマシー研究の現状について報告するとともに、昨年度のセミナー以降に抽出されてきた新たな課題を振り返りたいと思う。集中講座参加者との議論を通じて、多施設共同研究を進める場合の実践的な知恵や工夫も共有していきたい。