主催: 日本臨床薬理学会
小児 (特に新生児・乳児) の生理機能は成長と発達の影響を受け複雑で、成人と大きく異なります1)。また、成長・発達過程は非線形であり、小児を単純に小さい成人と捉えることはできません。一方で、小児の薬物治療は、臨床試験の実施が様々な制約から困難なため、やむをえず成人から得た情報に基づいている場合が多く、その安全性、有効性の確立が重要な課題とされています2)。Model-Informed Precision Dosing (MIPD)は、数理モデルを用いた薬物動態および効果・副作用の予測・シミュレーション、すなわちPharmacometricsの研究技術を活用して薬物治療の個別・最適化を目指すものであり、小児薬物治療への応用が積極的に進められています3)。本講演では、米国オハイオ州のシンシナティ小児病院における小児薬物治療のアウトカムの改善を目指したMIPDの研究・臨床実装に関する取り組みおよび今後の展望を、実例を交えて紹介します。また、米国におけるMIPDを取り巻く最近の動向についても紹介します。 参考文献 1. Kearns G et al. N Engl J Med. 2003 Sep 18;349(12):1157-67. 2. Wiles et al. J Pediatr. 2013 Jan;162(1):12-5. 3. Mizuno T et al. Br J Clin Pharmacol. 2022 Feb;88(4):1418-1426.