日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-S01-1
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シンポジウム
臨床試験のレイサマリー:その意義、現状と普及への取り組み
*八木 伸高
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抄録

患者・市民には臨床試験の計画や実施状況のみならず、結果についても知る権利があると考えられる。しかし臨床試験結果へ患者・市民がアクセスすることは未だ難しく、治験参加者であっても自らが参加した試験の結果にアクセスできないことがある。一般社団法人ピー・ピー・アイ・ジャパン(PPI JAPAN)では2022年6月、本邦での臨床試験のLay Summary(レイサマリー)の理解・普及のための取り組みを始め、本年10月13日、本邦初のレイサマリーに関するガイド「レイサマリー作成の手引き」を作成、公開した。

欧州では、欧州連合臨床試験規則(EU CTR)536/2014(2022年1月)により、第1相から第4相までの全ての臨床試験の結果を一般市民が知ることができるようレイサマリーの提供が必須となった。Good Lay Summary Practice(GLSP)は、臨床試験のスポンサーに対し、市民が公平に臨床試験情報へアクセスできるよう、臨床試験情報システム(CTIS)を通じたレイサマリーの提供を義務付けている。臨床試験のスポンサーは、レイサマリーを臨床試験の終了から12か月以内(小児を対象とする試験では6か月以内)に提出する。GLSPは10の必須項目を規定し、一般に年齢12歳以上の市民が読めるものとすることやインフォグラフィックス(視覚的表現)の活用を推奨している。レイサマリーをどのように作成するか臨床試験の計画段階から考慮することや患者・患者家族など当事者の視点を反映(当事者と共創)することの重要性を明確にしている。

本邦では、レイサマリーに関する検討はようやく始まったばかりである。厚生労働省から発出された通知「治験に係る情報提供の取り扱いについて」(薬生監麻発0124第1号 2023年1月24日)では、企業の治験専用ウェブサイトにて臨床研究など提出・公開システム(jRCT)に登録されている情報を公開すること、その際に平易な表現を用いることも可能とされ、患者・市民へのレイサマリーの公開が徐々に進むことも期待される。

「レイサマリー作成の手引き」は、日本におけるレイサマリーの作成・活用を進め、様々な立場の人々へのメリットや価値につながると考えられる。本講演では、「レイサマリー作成の手引き」の示すレイサマリーの意義、要件、作成・公開のプロセスを概観するとともに、手引き公開後に得た様々な立場からのフィードバックを踏まえた今後の展望を論じる。

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