主催: 日本臨床薬理学会
【目的】経口糖尿病治療薬であるナトリウム・グルコース共輸送体2阻害剤dapagliflozinについては、その他の糖尿病治療薬と同様、血糖降下作用における大きな個人差が問題となっている。我々はこれまでに、dapagliflozinのHbA1c低下作用が血漿中濃度に依存しないこと、すなわち、血糖降下作用の個人差を薬物動態学的に説明することが難しいことを報告してきた。本研究では、triglyceride低下作用を取り上げ、以下の検討を行った。
【方法】2型糖尿病患者113名を対象とした。Dapagliflozin 5 mg/day投与開始前(ベースライン)および投与開始1、3、6、9、12ヶ月後に、triglyceride値とともに、dapagliflozin血漿中濃度を評価した。なお、本検討は市立砺波総合病院、京都薬科大学における倫理審査委員会の承認を得て実施した。一方、Wistar系雄性ラットを用いて、常法に従い、poloxamer 407 0.5 g/kgを腹腔内投与し、脂質異常症モデルラットを作製した。Dapagliflozinを常用量に相当する0.1 mg/kgもしくは0.2 mg/kgで1日1回4日間反復経口投与後、経時的に採血を行い、triglyceride値、dapagliflozin血漿中濃度を評価した。
【結果・考察】2型糖尿病患者において、triglyceride値は、ベースラインと比べて12ヵ月後で有意に低下した(-9±36 mg/dL(±SD)、p=0.022)。また、ベースラインのtriglyceride値が150 mg/dL以上の患者でより大きく低下した(-45±34 mg/dL、p<0.01)。なお、この低下の程度は、dapagliflozinの5点平均血漿中濃度が高いほど大きい傾向にあった(r=-0.166、p=0.110)。一方、脂質異常症モデルラットにおいても同様に、弱い負の相関傾向を認めた(r=-0.326、p=0.393)。以上、dapagliflozinのtriglyceride低下作用が血漿中濃度に依存する可能性が示唆された。
【結論】Dapagliflozinの血漿中濃度が高くなる患者でtriglyceride低下作用が期待できると考えられた。