主催: 日本臨床薬理学会
【目的】痛風発作寛解薬として知られるコルヒチンの抗炎症作用に着目して様々な炎症性疾患に対する臨床研究が実施されているなか、冠動脈疾患リスク低下作用が明らかになってきた.本研究はこのコルヒチンの抗動脈硬化作用の機序を探索するため、粥状動脈硬化プラーク形成に関わるマクロファージの血管内皮下侵入と、血管内皮細胞におけるコルヒチンの微小管への薬理作用から推測される内皮型NO合成酵素(eNOS)への活性阻害の影響を明らかするために行った.
【方法】内皮細胞としてウシ胎仔大動脈内皮細胞、マクロファージとして単球系細胞株THP-1をPMA20ng/mL 48時間暴露し分化したものを使用した.マクロファージを溶媒(コントロール)またはコルヒチン1x10-8M(臨床用量服用時に実現し得る血中濃度)で24hr処置後、膜タンパク発現を保持する細胞剥離試薬により剥離・分散し、内皮細胞上に重層し3 hr共培養後固定、血球及び血管内皮マーカーを免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で観察した.血管内皮細胞を溶媒またはコルヒチン(1x10-8M x 24 hrまたは毒性を発現する非臨床用量の1x10-6M x 24hr)処置後、一部は一過性のNO産生刺激としてATP 1x10-5M 3min暴露し、回収・可溶化してウエスタンブロッティングを行い、eNOS発現及びその活性化を示すSer1177リン酸化を評価した.
【結果】コントロールではマクロファージの血管内皮下への侵入が認められたが、コルヒチンを処置したマクロファージではそれが抑制された.血管内皮細胞のeNOS発現はコルヒチン1x10-8M はコントロールと同等だが、非臨床用量の1x10-6M処置では発現増大を認めた.ATP刺激はコントロールとコルヒチン1x10-8M 処置では同程度にSer1177リン酸化を亢進した.一方でコルヒチン1x10-6M 処置ではリン酸化減弱を認め、この濃度ではeNOS活性が低下することから発現自体は代償的に増大していることが示唆された.
【結論】臨床用量コルヒチンは血管内皮機能を損なわずにマクロファージの血管内皮下への侵入を阻害することでプラーク形成を抑制し抗動脈硬化作用を発揮する.