主催: 日本臨床薬理学会
基礎研究で見いだされたシーズを医薬品として実用化(承認を取得し、保険診療下で使用可能な状況とすること)するためには、新たな有効成分の場合、基本的に、以下のプロセスが必要となる。動物等を用いて前臨床試験を実施した後、ヒトを対象として第I相、第II相、第III相試験と段階的に安全性及び有効性を確認する臨床試験を実施する。また、臨床試験と並行して、各段階で必要な非臨床試験を実施する必要がある。さらに、医薬品の品質に関する検討を行い、製造方法、規格及び試験方法、有効期間(安定性試験等)を決定する。アカデミアのみで、上記の全てを実施することは、困難であることから、どこかの段階で企業と連携し、協働して医薬品開発を進めること、または、製薬企業等にライセンスアウトを行うことが必要となる。企業連携、ライセンスアウトの時期は、アカデミアの立場としては、早めの段階を望んでいるものの、企業の立場では、ある程度のデータが得られた遅めの段階を望んでいることが多いように感じている。また、新たな有効成分ではなく、効能・効果の追加による実用化を目指す場合、効力を裏付ける試験(非臨床)、有効性及び安全性を検討する臨床試験の実施が基本的に必要となる。このような場合も、ライセンスアウトは、臨床試験を医師主導治験として実施し、結果が得られた段階となることが多い。演者は、これまで、Academic Research Organization(ARO)において、トランスレーションリサーチ等の支援を、薬事、プロジェクトマネージャー(PM)、スタディマネジャー(StM)として行ってきた。これまでの経験を基に、アカデミア発シーズ(医薬品)の実用化研究における課題を提示するとともに、アカデミア研究者、企業、それぞれの強み、弱みを提示する。