日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_3-C-S43-2
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シンポジウム
医薬品開発の現場で出会った臨床薬理学
*吉田 倫子
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抄録

臨床薬理学は、適正かつ質の高い薬物治療のために基礎と臨床の懸け橋となる必要不可欠な分野である。近年の医療の多様化に伴い、臨床薬理学においても若手医師や女性医師が臨床医としてだけではなく新たな役割を求められる機会が増えている。演者は眼科専門医として臨床経験を積み、眼科領域の難病である網膜色素変性に関する臨床研究の経験を経て医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ出向する機会を頂戴した。そこで医薬品開発の現場において必要な臨床薬理学には、レギュラトリーサイエンスに基づくアプローチなど、これまで臨床現場で学んできた臨床薬理学とは全く異なる側面があることを知った。PMDAへの出向を終えてアカデミアに戻り、研究者としてエビデンスを創出していくためには、臨床研究を実施するための環境整備など、更に異なる知識や対策が必要なことを痛感した。現在は診療科の枠を超えた臨床研究支援の機会を頂戴して、医薬品開発を含めた臨床研究に関する課題解決に向けて取り組んでいる。

女性医師の観点からの臨床薬理学について、妊娠・授乳中の女性は臨床試験から必然的に除外されることが多く性差に関する情報は不足しており、米国のThe Food and Drug Administration Office of Women's Healthのように女性の健康に関する課題に専門的に取り組む組織の普及は重要であると考える。また、多様性はイノベーション創出の重要な要素でもあり、他国と比較して極めて低い本邦の女性医師の割合を解決していく必要がある。演者は女性医師の離職及び復職困難の要因として報告されている妊娠、出産及び育児などを経験しながら管理職となる機会を頂戴した。それは上司や同僚に大変恵まれた強運によってもたらされたと感じており、持続的に女性医師や管理職を増やすためには組織的な取り組みが重要であると考える。

本シンポジウムでは、演者のこれまでの経験を紹介し、規制、研究者及び研究支援のそれぞれの観点からの臨床薬理学の重要性と課題について検討する。また、個別化医療推進の一助として臨床薬理学における性差について検討するとともに、女性医師が臨床薬理学の分野で更に活躍するための課題の解決策について皆様と一緒に考えたい。

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