日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第45回日本臨床薬理学会学術総会
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一般演題(口演)
パクリタキセルによる治療早期の重篤な好中球減少に対するABCB1遺伝子バリアントの及ぼす影響
前田 章光松尾 恵太郎安藤 仁盛重 純一室 圭内田 幸作田近 正洋
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p. 37-

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抄録

【目的】パクリタキセル(PTX)またはナブパクリタキセル(nab-PTX)を用いた治療は、まれに治療早期において非常に重篤な好中球減少症が生じ、致死的な転帰をたどることがある。治療早期に発現する重篤な好中球減少の発生を投与前に予測することは臨床的に重要であることから、我々はPTXがP糖タンパク質の基質であることに着目し、治療早期の重篤な好中球減少発現に及ぼすABCB1遺伝子バリアントの影響について調査した。 【方法】2018年1月1日から2023年8月31日までの期間に愛知県がんセンターにおいて、胃癌の2次治療としてPTXまたはnab-PTX+ラムシルマブの治療が行われ、キャンサーバイオバンク愛知にDNA検体が保管されている患者を対象とした。治療早期の重篤な好中球減少を投与開始28日以内の好中球数の最低値が250/μL未満または100/μL未満の発現と定義し、これらに対するABCB1遺伝子バリアント(T1236C (rs1128503)、G2677T/A (rs2032582)及びC3435T (rs1045642))の影響を調査した。主たる解析は、Firth’s logistic regressionを用いて行い、治療早期の重篤な好中球減少発現に対する説明変数をABCB1 C3435T (rs1045642)TT homotypeとし、年齢、性別、治療前好中球数、血清アルブミン及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼで調整した。 【結果・考察】解析対象は203名であり、患者背景は年齢中央値68歳、男性135名、PTX及びnab-PTX投与患者はそれぞれ77、126名。好中球減少250/μL未満及び100/μL未満を認めた患者はそれぞれ22名 (11%)、5名(2%)であった。ABCB1 C3435T (rs1045642)TT(homo)保持は非保持と比較し、好中球減少250/μL未満及び100/μL未満発現に対するオッズ比(95%信頼区間)はそれぞれ3.4(1.2-10.0)、28.1(2.8-283.3)であり、ABCB1 C3435T (rs1045642)TT(homo)保持と治療早期の重篤な好中球減少は有意に関連していることが明らかとなった。 【結論】PTX及びnab-PTXによる治療早期の重篤な好中球減少にはABCB1 C3435T (rs1045642)のTT(homo)の遺伝子バリアントが強く影響しており、同遺伝子バリアントの測定はPTX及びnab-PTXの副作用の事前予測に有用である可能性が示された。

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