公益事業研究
Online ISSN : 2759-0011
Print ISSN : 0387-3099
72 巻, 2 号
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巻頭言
研究論文
  • 髙野 直樹
    2021 年72 巻2 号 p. 1-8
    発行日: 2021/03/30
    公開日: 2024/05/29
    ジャーナル フリー

    2020年9月に1億8522万契約に達したわが国の携帯電話市場において、新たに5世代移動通信システム(5G)のサービスの提供が開始された。本稿では2020年11月にアンケート調査を行い、需要側である一般個人消費者の5Gの新規加入の選好要因についてコンジョイント分析して推定した。その結果、通信エリアが広がることが需要に影響しており、ついで機種(スマホ)代金が低下すること、月間利用可能データ量が増加すること、最大通信速度が高まることによって、5Gの需要は高まることが推定された。また、年間世帯収入と月額データ通信料金の効用との関連が示唆される一方で、通信エリアの効用は年間世帯収入にあまり関わらないと推定された。

現況論文
  • —安全管理の側面を中心に—
    須和 憲和, 吉田 裕, 中井 宏, 安部 誠治
    2021 年72 巻2 号 p. 9-21
    発行日: 2021/03/30
    公開日: 2024/05/29
    ジャーナル フリー

    日本では、1960年代末に乗合バスの輸送量がピークを迎え、その後は右肩下がりの状態となった。乗合バス事業は、地域独占が認められる代わりに内部補助で赤字路線を埋め合わせる仕組みのもとで運営されてきた。1970年以降、乗合バスは利益の出る事業分野ではなくなっていた。バス事業者は1980年代から、生き残り方策として、分社化政策を採るようになった。すなわち、鉄道会社直営のバス事業が分離されたり、大手バス事業者が不採算の地域ごとに分割した会社を設立したりする動きが始まった。乗合バスの分社は、地域路線移管の受け皿としてエリアごとに行われ150社を超えた。

    本稿では、分社会社に直接インタビューやアンケートを行い、分社化の意義と限界について安全管理の側面を重視しながら考察を試みた。分社時点では事業者に安全性向上を図るという視点はほとんどなかった。分社化は、人件費削減により経営改善効果はあったが、労働条件等の改善によってそのメリットは薄れてきた。分社化により、安全性が損なわれるおそれがあったものの、分社会社の安全管理体制が維持できた背景には、2006年に導入された運輸安全マネジメント制度の影響および分社会社における組織のコンパクト化や現場の対応力向上があったものと考えられる。

研究ノート
  • —コンジョイント分析から得られる示唆—
    上田 嘉紀
    2021 年72 巻2 号 p. 23-33
    発行日: 2021/03/30
    公開日: 2024/05/29
    ジャーナル フリー

    電気自動車やプラグインハイブリッド車が自家用乗用車の選択肢の1つとなりつつあるなか、業務用や配送用といった事業用車両も電気自動車等に置き換えていく動きが出始めている。これまで、電気自動車を導入する側の視点に立ち、価格や航続距離、充電インフラの整備状況といった課題があることについて分析がなされ、経済的支援を含めた普及政策が図られてきた。今回、消費者が事業用車両に電気自動車等を導入した企業をどのように評価するかという視点でアンケート調査を行い、コンジョイント分析を実施した。その結果、消費者は、おおむね電気自動車の導入を支援していること、また特に、配送用については、サービスのきめ細やかさや広告宣伝による知名度向上よりも、車両の電動化を支持しているということが明らかになった。

  • —インセンティブスキーム活用の視点からの考察—
    森山 真稔
    2021 年72 巻2 号 p. 43-53
    発行日: 2021/03/30
    公開日: 2024/05/29
    ジャーナル フリー

    本稿は、PFI事業における地球温暖化対策について、民間事業者へのインセンティブ付与の視点から考察を行ったものである。PFI事業において温室効果ガス排出量の削減に取り組むことには、財政負担の軽減と地球温暖化対策の推進という2つの意義がある。本稿では、学術研究の整理および入札資料の調査を通じて、その取り組みの実態と課題の明示を試みた。検討の結果、事業費と施設の環境性能のトレードオフが発生していること、施設の供用開始後に温室効果ガス排出量の削減に関するインセンティブが付与されていないことの2つの課題が明らかになった。その解決策として、本稿は、CO2の排出削減量を貨幣価値に換算した金額を入札価格から控除したうえで価格点評価を行うこと、事業方式をBOT方式としたうえでエネルギーコストを民間事業者に負担させるような事業スキームを採用することの2点を提案した。

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