公益事業研究
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現況論文
規制産業への政策効果
—酒類業の税制・公的規制を中心に—
藤井 大輔齊藤 由里恵松原 聡植野 一芳
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2025 年 76 巻 2 号 p. 41-54

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抄録

本稿では、アルコール飲料を扱う酒類業を対象として、酒税法改正の流れを概観し、ビール系飲料税制の是正、さらに税制改正によるビール系飲料の需要がどのように変化したのかを分析した。

ビール系飲料を舞台とする「イタチごっこ」とも揶揄される、酒税の隙間を縫って低税率の新商品を開発するビールメーカーと税収を確保するべく税率を改正する税制当局との攻防は、ビールと代替性の高い発泡酒、さらに新ジャンルへと需要が転移し、酒税の税収を確保したい税制当局の政策が必ずしもその効果を発揮しなかったと指摘できるだろう。

一方、公益事業などを対象とした公的規制は一定の緩和が進んだものの、酒類の製造・流通では、需給調整要件が存在することに代表されるように、公的規制が強く存在している。酒税の保全を図り、その確実な徴収と消費者への円滑な転嫁を政策目的として免許制度によって規制しているが、酒税の確実に徴収と消費者への円滑な転嫁を目的としているならば、酒類の製造・流通の免許制度を採る積極的な理由とはいいがたい。酒税の保全という立法目的から外れた規制は改革していく必要があるだろう。

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