わが国の送配電事業の事業報酬率の算定では、自己資本コストを評価する際に用いられる β 値の推計が課題の1つとされている。送配電事業におけるレベニューキャップ制度の詳細設計において、わが国が参照してきた英国では、Harris-Pringleの定式に基づいた β の推計を行っている。この推計方法は、定式としては複雑ではないが、理論的な仮定や推計作業の前提条件が結果に影響を及ぼす点で留意が必要といえる。実際に、英国の規制当局による β の推計方法を考察すると、理論的な枠組みを重視しながらも、データの入手可能性などに限界があり、留意点もいくつかみられる。
本稿では、英国の送配電事業における事業報酬率の算定で使用する β の推計方法の理論的な枠組みを示し、規制当局の実践に関する考察を通じて、この方法を使用する場合の留意点を明らかにし、わが国における今後の議論の一助とする。