抄録
日本には,平成26年6月18日に成立した改正医療法による医療事故調査制度と公益財団法人日本医療機能評価機構による医療事故情報収集等事業がある.両者の制度設計の目的は異なるものの再発防止の点で共通点があり,これらの制度は互いに補完しながら公的利用を促進することが社会的に求められている.両者の制度はWHOガイドラインに則って秘匿性,非懲罰性,独立性を担保した制度となっているものの,その報告書を医療裁判に流用することを禁止する法的制度は現在のところ存在しないことから,その報告書を利用する際にはWHOガイドラインの精神に則った運用が求められることとなる.
医療事故調査制度には自発型調査と第三者型調査が用意されている.それぞれの調査には長所および短所があり,これらを相互で補完しながら調査を進める必要がある.医療安全は裁判実務と異なり,個人ではなく組織に視点を移して再発防止策を検討するべきであり,学習システムの充実を図りながら医療現場により医療安全の文化を浸透させることが求められる.
また,各国における医療事故調査制度と本邦における医療事故調査制度を比較しながら,本邦の医療事故調査制度の課題を確認すると共に,今後の展開・展望について意見を述べるものである..