抄録
目的:手術室看護師のリスク感性に影響する要因を明らかにする.
対象と方法:近畿地方の手術室看護師1,161名を対象とし,Webによる質問紙調査を行った.医療事故に関する個人要因として看護師経験年数など11項目,組織要因として医療安全風土尺度など4項目,手術要因として手術メンバーでの情報共有など6項目,医療安全教育についてデータを収集した.リスク感性(広義)尺度を使用し,尺度得点を従属変数として重回帰分析を行った.
結果:292名から回答を得た(回収率25.1%).手術室看護師のリスク感性に影響する要因として,個人要因では「看護師経験年数15年以上」(β=0.261,P<0.001),「Big Five尺度短縮版:O開放性」(β=0.215,P<0.001),「インシデントレポート共有の自発的学習」(β=0.139,P=0.009),「医療安全委員の経験」(β=0.133,P=0.011),「インシデントレベル0~3b以上全部経験」(β=0.096,P=0.041),組織要因では「医療安全風土」(β=0.333,P<0.001),手術要因では「他職種を含めた情報共有の実施」(β=0.094,P=0.043)の7項目が抽出された.
結論:個人要因として看護師経験年数など5項目,組織要因として医療安全風土,手術要因として他職種を含めた情報共有の実施がリスク感性に影響した.リスク感性の涵養には,看護師経験年数の短い手術室看護師への医療安全教育の学習の動機付けと,手術室における医療安全風土の醸成が必要である.