医療の質・安全学会誌
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19 巻, 1 号
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原著
  • 奥山 絢子, 武村 雪絵, 片岡 惇
    2024 年19 巻1 号 p. 3-13
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:本研究では,看護部長の視点から,がん看護の質として,把握する必要性のある要素を明らかにすること,看護部長や病院の特性による認識の差を明らかにすることを目的とした.

    対象と方法:全国のがん診療病院849施設の看護部長を対象に,2021年9月~10月にインターネット調査を行った.調査内容は,文献調査に基づきドナベディアンの構造,過程,結果別に60項目を作成し,がん看護の質の評価のために施設の状況を把握する重要性と継続的なモニタリングの必要性の2点について「とてもそう思う」から「全くそう思わない」の7件法で尋ねた.探索的因子分析を実施し類似項目を整理した後,回答者の属性と病院の特性別に認識の差についてMann-Whitney検定を行った.

    結果:382名から回答を得,うち279名を分析対象とした(有効回答率32.9%).がん看護の質として,把握する重要性の認識は,「患者の生活の質(中央値6.20)」と「患者安全のための手順遵守実施状況(6.20)」が最も高かった.継続的なモニタリングの必要性は,「看護師の質・量の確保(6.33)」と「患者の生活の質(6.20)」が高かった.看護経験30年以上では,「看護ケア方針」の把握の重要性とモニタリングの必要性の認識が高かった(p<0.05).

    結論:今後これらの要素を中心に,がん看護の質指標を開発し,継続的に把握する体制を整備する必要がある.
  • 寺井 梨恵子, 丸岡 直子, 林 静子, 石川 倫子
    2024 年19 巻1 号 p. 14-25
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:転倒リスク場面における看護師の臨床判断能力について明らかにするために,「視覚情報に基づく転倒予防ケア決定までの臨床判断ルーブリック」を開発し,信頼性・妥当性を検討することである.
    対象と方法:看護師10名,看護学生10名,計20名に対し,パフォーマンス課題を提示し,場面観察中の思考をパフォーマンス評価するために,インタビュー内容を基にルーブリックを作成した.評定者3名で看護師,看護学生20名の臨床判断を評価し,信頼性と妥当性の検討を行った.
    結果:各観点のICC(3,1)は0.821~0.958の範囲内であり,一般化可能性係数(G係数=0.868)ともに,高い信頼性であった.決定研究(D研究)より,今回の11項目であれば評定者1名で高い信頼性を確保するものであることを確認した.また,弁別妥当性について確認された.I-T相関は0.300以下となる項目はなかった.
    結論:本ルーブリックは信頼性・妥当性を確認し,視覚情報に基づく臨床判断のルーブリックとして活用できることが示唆された.
  • 谷村 卓勇, 山口 円, 土田 敏恵
    2024 年19 巻1 号 p. 26-37
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:手術室看護師のリスク感性に影響する要因を明らかにする.
    対象と方法:近畿地方の手術室看護師1,161名を対象とし,Webによる質問紙調査を行った.医療事故に関する個人要因として看護師経験年数など11項目,組織要因として医療安全風土尺度など4項目,手術要因として手術メンバーでの情報共有など6項目,医療安全教育についてデータを収集した.リスク感性(広義)尺度を使用し,尺度得点を従属変数として重回帰分析を行った.
    結果:292名から回答を得た(回収率25.1%).手術室看護師のリスク感性に影響する要因として,個人要因では「看護師経験年数15年以上」(β=0.261,P<0.001),「Big Five尺度短縮版:O開放性」(β=0.215,P<0.001),「インシデントレポート共有の自発的学習」(β=0.139,P=0.009),「医療安全委員の経験」(β=0.133,P=0.011),「インシデントレベル0~3b以上全部経験」(β=0.096,P=0.041),組織要因では「医療安全風土」(β=0.333,P<0.001),手術要因では「他職種を含めた情報共有の実施」(β=0.094,P=0.043)の7項目が抽出された.
    結論:個人要因として看護師経験年数など5項目,組織要因として医療安全風土,手術要因として他職種を含めた情報共有の実施がリスク感性に影響した.リスク感性の涵養には,看護師経験年数の短い手術室看護師への医療安全教育の学習の動機付けと,手術室における医療安全風土の醸成が必要である.
報告
  • 上里 昌也, 奥山 めぐみ, 柴田 みづほ, 横山 威一郎, 桑原 麻理子, 水島 舞, 岸田 友治, 清水 郁夫, 磯野 史朗, 相馬 孝 ...
    2024 年19 巻1 号 p. 38-45
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:処置に伴う患者の身体的,精神的苦痛を抑制するため従来から鎮静法は多種多様に行われてきた.850床を有し1日約2500名の患者が受診する当院では,1日あたり約10件の鎮静処置が行われている.多職種の鎮静ワーキンググループ(鎮静WG)を発足させ,院内鎮静法の標準化を実施したので報告する.
    方法:主な取り組みは,1)鎮静薬適応外使用の院内承認,2)統一化した鎮静同意書の作成,3)鎮静ガイドラインの改訂,4)eラーニングの作成,5)気道確保(マスク換気)の実技研修システム作り,6)プロポフォールのプロトコル承認,7)鎮静後カルテ記録のための統一化したテンプレート作成,8)鎮静実施記録の集計と有害事象の検討である.
    結論:月平均244件の鎮静実施報告があり,処置3時間以上と有害事象例を鎮静WGで検討した.周知すべき内容を次期ガイドラインに盛り込むことで,安全かつ持続可能な鎮静法へ向かうと考える.
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