社会学評論
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対外国人意識改善に向けた行政施策の課題
小林 真生
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2007 年 58 巻 2 号 p. 116-133

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抄録

現在,日本は国際化と少子高齢化が同時に進行し,その結果として外国人人口の増加や外国人の構成も多様化することが,当然であるとの認識が広まってきている.それにもかかわらず,対外国人意識は悪化しているが,国は十分な対策を立てていない.研究上でも,個々の自治体の対策は検証されているものの,国の対策に関しての記述は不十分なものが多い.そこで,本稿では対外国人意識に対する国を含めた行政の対応を検証していく.
全国統計,および筆者が外国人集住地と短期滞在者であるロシア人船員が多く上陸する自治体を比較したアンケート調査から,日本においては外国人と地方社会との間に十分な交流がないままに,マスメディアなどの影響を受けて不安や偏見が高まっていることがわかった.その上で,国の施策と外国人との接点の多い5つの自治体の施策をインタビューと文献分析により比較検証した.そこで浮かんだ問題は,(1)自治体が異文化理解に対して基準を持っていないこと,(2)自治体では異文化理解施策を担う部署が定まっていないこと,(3)異文化理解教育に関する規定がないこと,であった.そして,これらに共通するのは国が異文化理解に関して,自治体や個人の熱意に依拠する方針を採っており,基準の設定などの基本的な関与を行っていないという問題点であった.国が統一性を持った指針を提示した上で,地域ごとの実情に対応しなければ,日本全体の対外国人意識の改善は難しいと言える.

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© 2007 日本社会学会
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