2009 年 59 巻 4 号 p. 734-751
階層帰属の定義は主観と客観の間をゆれ動いてきた.ここでは,そのどちらも前提にせず,SSMデータにもとづいて,階層帰属とはどんな変数なのかを再検討する.2005年調査では,「上/中/下」帰属が質問文の順番に左右されない客観性をもつ.また,本人収入による「上/中/下」帰属の分布の乖離はさらに拡大したが,その一方で,「1-10」帰属は「5」に集中する形にかわっており,分化と斉一性の二重性という特徴が見られる.
階層帰属は当事者カテゴリーとしての「上/中/下」を準拠枠として,自らの階層的リアリティを位置づけたものと考えられる.いわば階層的社会の見え姿であり,それ自体が現代の自省的階層社会の一部となっている.それゆえ,階層帰属の分析は,現代社会学や理論社会学の研究にとっても重要な事例になる.