社会学評論
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特集・「見る」ことと「聞く」ことと「調べる」こと
社会調査におけるマルチメディア利用の実践と展望
フィールドワークにおける映像データの取り扱いをめぐって
山中 速人
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2009 年 60 巻 1 号 p. 25-39

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抄録
本論では,フィールドワーク(FW)における映像メディア利用の形態が整理され,筆者が実施したFWにおける映像メディアとデジタル映像データを活用した調査事例が紹介・評価され,最後に映像FWの今後の展望と課題が提示されている.
FWにおける映像メディアの利用形態には,(1)対象者自身によって記録された映像メディアの利用,(2)調査記録としての利用,(3)調査手段としての利用,(4)調査報告としての利用,の4つがある.(3)についてさらに分類し,(a)映像撮影によるラポール形成,(b)映像によるメモ,スケッチ,フィールドノーツ,(c)映像による対象者へのフィードバックと参加の3形態があると指摘される.
つぎに,調査事例については,(1)ライフスタイル調査への応用としてタイにおける8ミリビデオを使った生活財調査,(2)防振ステディカムを使った大阪生野コリアタウンの映像記録事例,(3)デジタル映像とハイパーテキストによるライフストーリーの記録CD-ROMの制作事例,の3つが紹介され,方法の概説と評価が行われている.
最後に,映像FWの展望と課題について,(1)映像メディアを社会学研究に活用する際のマルチメディア技術の有効性が指摘され,さらに,(2)社会学研究の過程で作成された映像コンテンツに対して,研究者と対象者の非対称性を克服するため,開かれた「読み」への参加の重要性が指摘されている.
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© 2009 日本社会学会
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