抄録
本稿は,グローカル化の下での「複数の第2の近代(multiple second modernities)」を考えるための理論枠組みと基本的な留意点を検討することを目的とし,その事例として主に「日本」を扱う.そのため,「個人」―「中間集団」―「国家」という3者関係の,個々のローカリティによって異なるパタンという主題を補助線として措定し,現代におけるその変容を検討する.以上をとおしてグローバル化と社会学理論という問題を,一定の角度から検討することを,含意として試みる.
近代社会に内在的な構造的緊張は,上記3者関係の,個々の地域における制度的パタンにしばしば表現される.基本的な分析枠組みとして,グローカル化論と複数の近代論との異同の分析と両者の節合を検討し,上記3者関係の「西欧」「アメリカ合衆国」「日本」それぞれにおける類型化を試みる.現代社会においては,「個人性」(個人でなく)―「媒介ネットワーク」(中間集団でなく)―「変容する国家」(国家でなく)の3者関係のパタンとしてそれは表現される.複数性の中での個々の地域の個体性を観察するためには,この3者関係の制度的構造だけでなく,それをさらに規定する集合化/個人化の基層的論理をも検討する必要がある.
以上の諸問題を「日本」の場合を焦点として考察し,グローカル化の下の「複数の第2の近代」の1つとしての現代日本について,その歴史的・文化的個体性をふまえて分析する.