2010 年 61 巻 2 号 p. 112-129
本稿の目的は,潜在クラス分析により,両親と本人の世代間学歴移動のパターンの変化を,教育拡大と関連づけて明らかにすることにある.教育は社会階層の研究において最も重要な変数の1つであるが,両親の学歴が高いほど本人も学歴が高いという関係以外には,質的な関係はそれほど詳らかになっているわけではない.専門学校や短大が教育拡大の中でどこに位置づけられてきたのかの評価も,定説は存在していない.そこで父・母・本人の3者の教育変数のクロス表から潜在クラスを導き出し,コーホートごとに多く観察される学歴関係のパターンを見出すことにした.データは2005年SSM調査を用い,導かれた潜在クラスが特定の職業階層や文化的背景のもとに見られるかを確認するため,多項ロジット潜在クラス分析を推定した.その結果,男女,いずれのコーホートでも3つの潜在クラスが導き出せた.潜在クラス分析の結果は,教育の拡大は格差を維持したまま進行すること,教育の優位度分布は一定で,進学率の上昇は進学のしやすさの閾値構造の変化で示されるという先行研究を概ね支持するものであった.その上,それぞれの潜在クラスは,父職や文化的資産によって異なる傾向をもっていた.専門学校進学者は男女とも高卒層の多いクラスに多く,女性の短大層は当初は4年制大学の多いクラスに所属していたが,徐々に異なるクラスへと分岐していったことが明らかになった.