社会学評論
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近代化と友人関係
国際社会調査データを用いた親密性のマルチレベル分析
柴田 悠
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2010 年 61 巻 2 号 p. 130-149

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抄録

社会の近代化に伴って,親密性やその意味は,いかに変化するのか.
先行研究によれば,特定の条件に依存しない「再帰的親密性」(親族・近隣・職場以外での友人関係など)は,社会の近代化に伴って普及し,個人にとって一定の重要性を帯びたと考えられる.しかし未検証の仮説として,社会が近代化すると,(1)「再帰的親密性の数や割合が変化する」,(2)再帰的親密性の重要度が「上昇する」,(3)「必ずしも上昇せず,上限未満の一定の高さを得た後で上昇しなくなりうる,または下降しうる」(特定条件に再埋め込みされた親密性もまた次第に重要になる),との3つの仮説が想定できた.検証方法としては国と個人のマルチレベル分析が必要であったため,それを採用した.
まずISSPデータ(2001年)で「再帰的に選択された友人の数と割合」を分析すると,国レベル近代化変数「総就学率」が効果を示した.また再帰的友人関係の「幸福度に対する貢献度」(一般的重要度)を分析すると,国レベル近代化変数「一人当たりGDP」の上昇に伴って,一般的重要度は低下した.
さらにWVSデータ(1990年と2000年)で,友人と家族の主観的重要度の比を分析すると,「一人当たりGDP」の上昇に伴って「友人関係(比較的再帰的な親密性)の相対的重要化」がある程度は進行するが,それ以上は進行しなくなった.
以上の結果は,仮説(1)を支持するとともに,仮説(2)よりも仮説(3)のほうを支持した.

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© 2010 日本社会学会
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