社会学評論
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都市における住宅の商品化とその変容
家庭の空間から身体感覚の空間へ
山本 理奈
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キーワード: 都市, 住宅, 身体
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2011 年 62 巻 2 号 p. 172-188

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抄録
戦後, 日本社会の基礎構造が形成されたのは高度経済成長期である. この時期に生じた産業構造の転換は, 農村の解体とともに都市へ大量の人口流入をもたらした. その結果, 大都市とその通勤圏には, 俸給生活者とその妻子からなる核家族が広く見受けられるようになった. この大規模な都市化と核家族化の過程で重要な役割を果たしたのは「住宅」である. 従来の研究では, 住宅は近代家族の容器と見なされ, 近代家族規範が具体化された空間として捉えられてきた. しかしこの考え方では, 近代家族の実在性が前提されており, 住宅のありように近代家族規範の作用が強く想定されてしまう.
本稿では, まず, 近代家族という概念を実体化し, 住宅をその具体的容器とみなす近代家族論の問題構成を批判的に検証する. 次に, 戦後日本社会の構造変容, すなわち消費社会化との関連で, 家族と住宅の関係を分析する. 具体的には, 都市における住宅の商品化とその変容のプロセスに着目し, 次の3点を解明する. 第1に, リビングルームの生成という観点から, 戦後の日本社会が<家庭>を単位とする消費社会として成立してきた過程を明らかにする. 第2に, 居住空間の変容が家族規範よりも産業システムの高度化と強く連動してきたことを明らかにする. 第3に, 現代の超高層集合住宅を参照し, 居住空間の分節の焦点が<家庭>から<身体>感覚の快適性の次元へと移行していることを明らかにする.
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© 2011 日本社会学会
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