社会学評論
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特集・複合社会調査データ分析の新展開
高齢者の社会的ネットワークにおける加齢変化とコホート差
全国高齢者縦断調査データのマルチレベル分析
小林 江里香Jersey LIANG
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2011 年 62 巻 3 号 p. 356-374

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抄録

異なるライフステージで高度経済成長期を経験した3つの出生コホート (C1: -1915年, C2: 1916-25年, C3: 1926-36年) を対象に, (1) 高齢期の社会的ネットワークやその加齢変化におけるコホート差と, (2) コホート効果の媒介要因を検討した. ネットワークは, 親友数, 親しい近隣数, 友人等との対面接触頻度, 所属グループ数, グループ参加頻度で測定した. 全国の60歳以上を対象とした7回の縦断調査から4,999人, 1万6955件のデータを用いてHierarchical Linear Modelによるマルチレベル分析を行った結果, どのネットワークも加齢に伴い曲線的に減少していたが, グループ参加の変化の仕方はコホートにより異なっていた. また, 男性では最近の2コホート (C2, C3) はC1に比べて近隣数や対面接触頻度が低いのに対し, 女性では近隣数のコホート差は男性より小さく, 親友数や接触頻度は最近のコホートのほうが高い傾向があり, 男女差 (女性>男性) が拡大していた. グループ数・参加頻度は, C1では男性のほうが女性より高かったが, 参加頻度についてはC3で男女差が逆転していた. コホート効果の一部は社会経済的要因により説明できたが, 健康・社会経済的・家族要因投入後もコホート差は残った. 本結果は, 社会的ネットワークの男女差は普遍的ではなく, コホートが経験したライフコースにより変わりうることを示している.

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© 2011 日本社会学会
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