社会学評論
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職業アスピレーション再考
職業間類似判定と選好度データに基づく計量分析
林 拓也
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2012 年 63 巻 3 号 p. 359-375

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抄録

職業アスピレーションは, 職業達成のプロセスに関わる社会心理的な媒介要因として位置づけられる志向である. 近年の日本の状況を扱った実証研究によると, それが達成プロセスと遊離しつつあるということが示唆されているが, こうした結果については慎重な検討を要する. アスピレーションの測定に際して, 「地位」の優位性と一次元性が前提とされているためである. そこで本稿では, 職業の一次元的な「地位」に限定されない, 職業間の「類似性」に着目するアプローチから職業志向を導出し, それに基づいてアスピレーションについての再検討を加えていく. 分析に用いたデータは, 2008年に東京23区在住の25~39歳男性雇用者を対象とした調査により得られたものである. このデータに対し, 職業間類似度に基づく認知構造の析出, その構造における職業選好の方向, そして志向と達成プロセスとの連動について段階的な分析を展開した. 認知特性の次元としては, 「安定的地位」「組織/技能」「裁量」が析出され, 個々人の選好データに基づいてそれらに対する志向が計測された. また, 各志向が回答者自身の職業など客観的属性と関連していることから, 達成プロセスとの連動も確認された. そのうえで, これまでのアスピレーション研究との接合や今後の課題について議論を展開した.

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© 2012 日本社会学会
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