社会学評論
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グローバル・シティと賃金の不平等
産業・職業・地域
安井 大輔DEBNAR Milos太郎丸 博
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キーワード: グローバル化, 都市, 格差
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2013 年 64 巻 2 号 p. 152-168

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抄録

本稿の目的は, Saskia Sassenの『グローバル・シティ』から産業・職業・賃金の不平等に関する理論を取り上げ, その仮説の都道府県における妥当性を検証することである. グローバル・シティ仮説によれば, 東京では経済のグローバル化によりIT・金融・専門サービス産業が増加し中間層にあたる第2次産業は縮小し, 専門管理職の上層サービス職と販売サービス職の下層サービス職が増加する. この職業構造により賃金の不平等が拡大される. この仮説は東京が他地域よりも脱工業化が進み上層と下層のサービス職比率が高く賃金の不平等が大きいことを含意する. そこでこの含意が東京と他の道府県にどれほど当てはまるのか, 国勢調査と賃金構造基本統計調査のデータを用いて計量分析を行った.
結果, (1) 東京はIT・金融・専門サービス産業比率は高いものの第2次産業比率も高い. (2) 第2次産業比率が低くIT・金融・専門サービス産業の比率が高い都道府県は上下層のサービス職比率が高い. (3) 下層サービス職比率が高い都道府県は不平等が大きいものの上層サービス職比率が高い都道府県は不平等が小さい. 上下層のサービス職比率や賃金の不平等に対するグローバル・シティ自体の影響は小さく限定的だった.
各仮説の検討から一部の相関は有意だが仮説に反する結果も多く, 結果としてグローバル・シティのほうが賃金の不平等が大きいという仮説は支持されなかった.

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© 2013 日本社会学会
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