社会学評論
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特集号・社会学は政策形成にいかに貢献しうるか
若者の移行期政策と社会学の可能性
「フリーター」「ニート」から「社会的排除」へ
宮本 みち子
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2015 年 66 巻 2 号 p. 204-223

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抄録

1990年代後半以後, それまで低迷していた若者研究が活発になり, その後2000年代の中盤あたりまで, 政府の若者政策の活発化を背景に, 学術研究とマスメディアのさまざまな言説のブームとなった. それらを区分してみると, ①フリーターなどの若者の実態把握を中心とする調査研究, ②国際比較の観点で, 先進工業国の若者の実態と施策を検討する研究, ③日本における労働を中心とする若者施策の検討, ④フリーターやニートやひきこもりなどから脱出するためのアドバイス本, ⑤フリーターやニートを巡る言説分析の5つに分かれる.
2000年代の取り組みは, 研究者, 行政, 民間団体の密接な共同関係を抜きには発展しなかった. そのなかで, 若者の実態を分析し, 社会政策の課題として提示したことが研究者の役割であった. 社会学は, 無業者問題を社会的包摂の課題として位置づけ, 社会政策を構想できる. また, 若者問題を包括的に理解するという視点や方法論は社会学が得意とするところである. 社会学者は社会政策の視点をもち, 長期的な視野に立って若者への社会投資が必要であることを主張する必要がある.

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© 2015 日本社会学会
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