社会学評論
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「社会」用語法による表象の特質について
日本における用例の普遍的含意を解釈する
高良 倉成
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キーワード: 社会, 用語法, 20世紀
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2016 年 67 巻 1 号 p. 73-88

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抄録

「社会」用語法の経緯を現時点から捉え直すとき, 日本の経験は西欧の経験とともに世界史的含意をくみ取るべき先行事例に属する. 「社会」用語法の世界史的特徴を析出するには, 先行グループの経験から考証するしかないが, 日本の経験はその考証対象の1つである. 本稿は日本における「社会」用語法を検証しているが, それは日本的特殊性や後進性を見出すためではなく, 「社会」用語法の世界史的な経緯を解釈する参照事例にするためである. 「社会」の語で表象されてきたのは, あるときは具体的任意団体や交流範域であり, あるときは統治秩序へ働きかける作為の側の規範的拠り所であった. そして19世紀終盤以降に「社会国家」 (福祉国家) を希求する論調のなかで, 国家的再分配システムが包摂すべき生活領域を含意させるために前接用法 (または形容詞用法) が増加する. 「社会」用語法は特定の国や地域の内部で個別に発展してきたというよりも, 世界史的なスケールで諸表象が覆い被さるように混在するかたちで展開してきた. そして20世紀初頭以降に名詞形での「資本主義」による表象が定着しはじめていくなかで, 「資本主義」批判の言説と共鳴しながら「社会」用語法はよりいっそう普及した.

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© 2016 日本社会学会
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