社会学評論
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地域防犯体制の構造転換
仙台市宮町民間交番を事例に
菱山 宏輔
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2016 年 67 巻 1 号 p. 89-105

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抄録

本稿は, 安全安心まちづくりの全国展開から10年を経た現在, 全国初の民間交番を開設した仙台市宮町地区防犯協会を事例に, 「地域セキュリティの論理」を分析枠組みとして地域防犯体制の構造転換を明らかにする. その際, 都市計画道路として開発が進められてきた北四番丁岩切線に着目し, 中心・周辺・郊外のマクロな都市構造の変化と, 区制の導入および警察管区の再編というメゾ次元の地域構造の変化によって, 地区防犯協会と地域社会がどのように影響をうけてきたのかという観点から論じる. 仙台市の拡大に伴い北四番丁岩切線は拡張を繰り返し, 市の区制移行を契機として中江交番は幸町へと移転した. 中江・小田原地区から分離・新設された幸町防犯協会は, 地区の再開発のなかで新たな活動をはじめた. 他方で, 中江がインナーエリアとしての様相を強めるなか, 中江・小田原地区防犯協会は宮町地区防犯協会に編入され, 宮町民間交番が開設された. 当初, 民間交番は地域の「居場所」として応用的な活動をみせた. しかし, 町内会連合会は民間交番の運営の不備を巡り紛糾した. アノミー状況をのりこえるために, 民間交番は合理的組織構成を正統性に据えた組織に刷新された. これにより脱領域的な広域の活動が可能となる一方で, 安全安心まちづくりにより地域セキュリティの論理の疎外が生じた. これを対象化しつつ地域に根ざす活動の可能性を見いだすことが今後の課題となる.

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© 2016 日本社会学会
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